


能鑑賞の手引書―1
能とは
能とは室町時代に成立した日本の誇る古典演劇の一つです
声楽(謡と呼ばれる歌唱)と舞(主に扇を使う舞と所作)を中心に構成されるため、歌舞劇と呼ばれます。
主人公の役者が面を着ける事が特徴です。
先ず古典芸能と言っても演劇の一種ですから、解説も何もなしに見たまま聞いたままを感じていただければよいのですが、一つネックになるのが使われる言葉が古い日本語ということです。
あと動きが少ない
しかしながら古語というだけで、他言語ではありません。
昔も今も意味の変わっていない言葉も数多くあります。
父、母は昔も今も父、母です。「美しい」などの形容詞は活用部分が現代とは違いますが、語幹の「美し」は変わりありませんので、必ず聞き取れるはずです。
また、動きに関しても、人間の動きですので、違和感は感じないはずです。
ただ現代の人の動きに比べて、動きがゆっくりだと感じることはあると思います。
この一つの理由は仮面を付けて演技をするためといえます。仮面を着けて演技をすると視野が限られるため、動きも思うようにいかないためという消極的理由もありますが、それを逆手にとって少ない動きに意識を込めて、表現を集中させるという方法を取っているといえます。
また能のストーリーに登場する人物は、現実に生きていない人物の場合が多く、その時に仮面を着けます。面を着けている時は、人間の動きを超越して魂の動きになっているとも言えます。
以上、二つの理由から、動きが少なく、静かな動きになる場合があります。
しかし、全ての能の動きが静かでゆっくりではありません。
鬼、神といった超人的な存在の場合は、動きも素早く激しい動作の場合が多いです。
能の動きは、静と動を織り交ぜた動きといえます。
手引書-2
能のストーリーについて
『平家物語』や『源氏物語』といった古典文学を題材とする作品が多いです。
演劇ですから、ストーリーがあり、主人公が過去を物語る形式のストーリーと、現在進行形のストーリーに大別されます。
能の声楽は謡と呼ばれ、腹式呼吸で日本語の美しさと響きを大切にする事を心掛ける発声を用います。この謡を囃す演奏が囃子と呼ばれ、笛、小鼓、大鼓、太鼓、で構成されます。
謡と囃子が物語を進行させ、ストーリーと共に様々な心情や景色を表現します。
主人公を中心に物語の人物たちが所作や舞で場面を描いてゆきます。