能を鑑賞する

藤

能とは

能とは室町時代に成立した日本の誇る古典演劇の一つです。

声楽(謡と呼ばれる歌唱)と舞(主に扇を使う舞と所作)を中心に構成されるため、歌舞劇と呼ばれます。主人公の役者が面(おもて)を着ける事も大きな特徴です。

古典芸能と言っても演劇の一種ですから、解説も何もなしに見たまま聞いたままを感じていただければよいのですが、一つネックになるのが使われる言葉が古い日本語ということです。

しかしながら古語というだけで、他言語ではありません。昔も今も意味の変わっていない言葉も数多くあります。

「美しい」などの形容詞は活用部分が現代とは違いますが、語幹の「美し」は変わりありませんので、必ず聞き取れるはずです。

また、動きに関しても、人間の動きですので、違和感は感じないはずです。ただ、現代の人の動きに比べて、動きがゆっくりだと感じることはあると思います。

その一つの理由は、仮面を着けて演技をするためです。仮面を着けて演技をすると視野が限られます。それを逆手にとって少ない動きに意識を込め、表現を集中させるという方法をとっています。

また、能のストーリーに登場する人物は、現実に生きていない人物の場合が多いので、面を着けている時は、人間の動きを超越して魂の動きになっているとも言えます。

そんな特徴から、能の動きは少なく、静かな動きになる演目もありますが、全ての能が静かな動きでははありません。

超人的な存在の鬼、神などは、素早く激しい動作で表現する場合が多くあります。

能の動きは、静と動を織り交ぜた動きなのです。

能のストーリーについて

『平家物語』や『源氏物語』といった古典文学を題材とする作品が多いです。

演劇ですから、ストーリーがあり、主人公が過去を物語る形式のストーリーと、現在進行形のストーリーに大別されます。

能の声楽は謡と呼ばれ、腹式呼吸で日本語の美しさと響きを大切にする事を心掛ける発声を用います。この謡を囃す演奏が囃子と呼ばれ、笛、小鼓、大鼓、太鼓、で構成されます。

謡と囃子が物語を進行させ、ストーリーと共に様々な心情や景色を表現します。

主人公を中心に物語の人物たちが所作や舞で場面を描いてゆきます。